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つわりに効く漢方薬

つわりに効く漢方薬

今回のテーマは「つわり」です。

妊婦さんを悩ませるものは数あれど、その中でもつわりのひどい方の苦しみは相当なものですよね。漢方でのつわりの捉え方と、対処法について今回はお話していきます。

つわりは妊娠5週目〜16週目くらいまでの間におこりやすい吐き気を中心とする不快感のことです。吐きつわり、食べつわり、においつわりなど幾つかの特徴に別れます。つわり自体は1〜2ヶ月で自然となくなるケースが多いとされますが、まれに妊娠後期まで症状が続き、妊娠悪阻(おそ)になっているという危険なケースもあるので注意が必要。やっかいなのは正確に原因が解明されていないという点です。

妊娠初期のホルモン分泌量を原因とする説が有力ですが、つわりのある方、無い方がいます。

つわりは、ホルモンだけでなく、その他にもさまざまな生活習慣や体質が関与している点から、予防や改善がむずかしく、西洋医学的にはなかなか薬を処方しづらい症状です。

 では具体的に「漢方薬でつわりの改善ができるのか?」ということですが、結論から申し上げますと「できます」。きちんとつわりに用いる漢方薬があります。

私がご相談を受けるつわりのひどいタイプの方に、ほぼ当てはまるのは胃腸系が弱く、水分の代謝が悪い方です。胃腸というのは漢方では「脾(ひ)」に含まれ、消化したものを栄養として取り込んだ後にエネルギー・血液・体液に形を変えたものを、体の隅々まで運んでいくという仕事を持っています。胃腸系が弱い方はこの働きが悪く、吐き気が出やすい傾向にあります。暴飲暴食の後の胃腸の具合をイメージしていただくとわかりやすいでしょうか。胃腸に水が溜まると嘔吐感が出てきます。つわりの方は、この体質が悪化したり敏感になってしまうのだと考えています。

胃腸系を労り、水分代謝を正す漢方薬がつわりの症状改善によく効きます。また、吐き気はそれほどでもないのですが、ゲップが止まらない、お腹が張って仕方がない、という方は少々先ほどとは違う漢方薬が必要です。つわり、といってもタイプが違うと、漢方の処方も違うのだということをご理解いただき、ご相談いただければと思います。つわりになられた方は「私が食べないと赤ちゃんに栄養が行かない」という義務感から無理に食べたり、食べられない自分を攻めたりしがちになる方が多いようです。

しかし、妊娠初期の赤ちゃんは、「卵黄嚢」と呼ばれる受精卵から作られたものからしっかりと栄養を摂れているので心配はいりません。つわりの時は、食べたいタイミングで食べられそうなものを、食べられる量だけを食べれば大丈夫です。つわりが「永遠につづくものではない」と思って、漢方を使いながらできるだけストレスのない日々を過ごしていただくことが一番だと思います。

つわりを終えた先に待っている赤ちゃんとの出会いを楽しみにしながら、少しだけ辛抱してみてください。

執筆:漢方のスギヤマ薬局 杉山卓也

2017年3月13日