健康情報、漢方関連のトピックを掲載しています。

「夏の時期に多い悪循環」

人間の身体の水分代謝を担うのは「脾(ひ)」と呼ばれる部位であり、一般的には胃腸系を主とした消化器系の総称として漢方では考えます。この「脾」は水分だけでなく、身体のエネルギーや血液を体中に運ぶと言う非常に重要な役割を担っています。
「脾」は過剰な水分により傷む、という性質があり、特にこの時期暑くて喉が渇くので、冷たいものをがぶ飲みすることによりまずは調子が崩れます。次に 体に水分がだぶつき、だぶついた水分は熱を吸収して、ますます体には熱がこもっていくのです(この状態を湿熱とも呼びます)。梅雨の時期に雨で濡れたからだがジメジメと気持ち悪く熱を発するイメージをしていただければわかりやすいでしょうか。この不愉快な暑さによりまた冷たいものをがぶ飲みする・・というまさに悪循環です。梅雨以降に激増する体の重だるさは水の停滞が原因ですが、これを栄養不足だと勘違いし、「夏バテには精をつけなくちゃね!」と肉類や脂っこい、いわゆるスタミナ料理を食べてしまうと、胃腸にもたれ、結果的にまた脾の働きを弱めてしまうのです。全てが見事に逆効果の悪循環ですね。

ですから「この時期汗をかくからとにかく水を飲みましょう!1日最低2ℓ!」というこの時期良く耳にする言葉には少々注意が必要です。さらにキンキンに冷蔵庫で冷した砂糖まみれの清涼飲料水をがぶがぶ飲んだら・・・想像しただけで脾の叫びが聞こえてきませんか?
「水を飲めば夏バテにならない」というのは漢方の考えから行きますと少々危険です。水分はあくまでも適量(運動などしていない平常時にあえて水分として摂るなら喉が渇いた時に少量ずつ)を心がけ、冷さずにせめて常温程度にしてできればミネラル分の多い精製されていない少量の塩分と一緒に摂るようにしましょう。

執筆:漢方のスギヤマ薬局 杉山卓也

2014年6月20日